キッチンカーの車検はどこで受ける? 費用相場と「通らない」を防ぐ重要ポイント
キッチンカーは法的に「特殊車両」扱いとなるため、車検を受ける時に、乗用車とは異なるルールが存在します。ここを理解していないと、車検が通らないだけでなく、無駄な出費や労力がかかってしまうこともあります。この記事では、キッチンカー特有の車検ルールと、安くスムーズにクリアするためのポイントを分かりやすく解説します。
この記事は、こんな人におすすめです
・キッチンカーの車検費用を少しでも安く抑えたい方
・「8ナンバー」登録の条件やメリット・デメリットを知りたい方
・車検時に厨房機器(荷物)を降ろすべきか迷っている方
・ユーザー車検に挑戦するか、プロに代行を頼むか検討中の方
・どこで車検を受けるのが正解か、信頼できる依頼先を探している方
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キッチンカーオーナーにとって最も気になるのが車検費用でしょう。結論から申し上げますと、大きな修理箇所がない場合の費用総額の目安は以下の通りです。
・軽トラックベース:約4.5万〜7万円
・普通車(1t・バン)ベース:約7万〜15万円
・大型トラック・バスベース:約15万円〜
この金額の幅は、車両の状態や依頼する業者によって変動します。車検費用は大きく分けて「法定費用」と「車検基本料・整備費用」の2つで構成されています。それぞれの内訳を詳しく見ていきましょう。
法定費用とは、法律で支払いが義務付けられている費用で、全国どこで車検を受けても金額は一律です。ここには「自動車重量税」「自賠責保険料」「印紙代」が含まれます。
キッチンカーの多くは「8ナンバー(特種用途自動車)」で登録されています。実は、8ナンバーには税制面でのメリットがあります。例えば重量税に関しては、貨物車(4ナンバー)よりも割安になるケースが多く、維持費の削減につながるのです。
[参照提案] 国土交通省「自動車重量税額について」のページ、または軽自動車検査協会の料金表を参照し、最新の税額を確認することをおすすめします。
法定費用の目安は以下の通りです。
| 項目 | 軽トラック(8ナンバー) | 普通車(8ナンバー・〜2t以下想定) |
|---|---|---|
| 自賠責保険料(24ヶ月) | 14,000円〜16,000円程度 | 17,000円〜20,000円程度 |
| 自動車重量税(2年) | 5,000円〜8,000円程度 | 10,000円〜20,000円程度(重量による) |
| 印紙代 | 1,000円〜2,000円程度 | 1,000円〜2,000円程度 |
※金額は法改正やエコカー減税の適用有無、経過年数により変動します。
法定費用以外にかかるのが、整備工場や代行業者に支払う手数料です。これには「24ヶ月定期点検料」「測定検査料」「車検代行手数料」などが含まれます。
ユーザー車検(自分で検査場に持ち込む方法)であれば、この部分は0円で済みますが、プロに依頼する場合は一般的に1万円〜3万円程度が相場となります。「自分でやる手間」と「プロによる安心・確実な整備」を天秤にかけて判断する必要があります。激安車検を謳う業者と専門店の見積もりに差が出るのは、主にこの点検の質やサポートの手厚さが異なるためです。
見積もりの段階では安く見えても、実際に点検をしてみると部品の劣化が見つかり、追加費用が発生することはよくあります。特にキッチンカーは重い厨房機器を積んで走るため、足回りやブレーキへの負担が大きくなりがちです。
予算には余裕を持っておくべきでしょう。よくある交換部品とその費用目安は以下の通りです。
・タイヤ交換(4本):約1.5万〜3万円(タイヤのグレードによる)
・エンジンオイル/エレメント交換:約3,000円〜
・ブレーキパッド交換:約1万円〜
・バッテリー交換:約5,000円〜1.5万円
格安車検の見積もりにはこれらの整備費用が含まれていないことが多いため、最終的な支払額が想定より高くなる可能性があることを覚えておきましょう。
キッチンカーを運用する上で、次の車検がいつ来るのかを把握しておくことは、事業計画を立てる上でも非常に重要です。8ナンバー(特種用途自動車)の車検期間は、一般的な乗用車や貨物車と一部異なるルールがあります。
キッチンカーの多くは、軽トラックや1t〜2tトラック、バンなどをベースに改造されています。基本的に8ナンバー登録されたキッチンカーの車検期間は「2年ごと」です。
以前は、普通車の8ナンバー(特種用途自動車)の中には、毎年車検が必要なケースもありましたが、現在の一般的なキッチンカー(加工車登録やキャンピング車登録など)の要件を満たすものは、多くが2年車検となっています。
ただし、車両総重量が8トンを超える大型車ベースの場合など、例外的に「1年車検」となるケースもあります。ご自身の車両の車検期間は、必ず車検証の「有効期間の満了する日」を見て確認してください。
もし、キッチンカーとしての架装が簡易的で、積載物として扱っている場合など、「4ナンバー(貨物自動車)」のままで登録している車両は注意が必要です。 4ナンバーの普通貨物車の場合、初回のみ2年ですが、2回目以降は「1年ごと(毎年車検)」となります(軽トラックなどの軽貨物は2年ごと)。 8ナンバー化することで車検頻度が減り、手間とコストが削減できる可能性があるのはこのためです。
「車検が近づいてきたけれど、いつ出せばいいの?」「何日くらい営業を休めばいい?」といった疑問にお答えします。
車検は、車検満了日(有効期間の満了する日)の1ヶ月前から受けることができます。 例えば、満了日が4月20日の場合、3月20日から4月20日の間に車検を受ければ、次回の満了日は変わらず2年後の4月20日となります。
おすすめの時期:満了日の2週間前〜1ヶ月前 ギリギリになってから予約しようとすると、希望の日時が埋まっていたり、部品交換が必要になった際に満了日までに間に合わなくなったりするリスクがあります。特にキッチンカーは営業スケジュールが詰まっていることが多いため、余裕を持って1ヶ月前には予約を入れておくのがベストです。
2月から3月にかけては、自動車業界全体の決算期や新生活準備が重なり、車検場や整備工場が一年で最も混雑します。この時期に車検が重なる場合は、早めに予約するか、可能であれば(満了日は変わってしまいますが)前倒しで1月に受けてしまうのも一つの手です。
依頼先によって、車検にかかる日数は大きく異なります。
・ユーザー車検:半日〜1日
自分で持ち込むため、検査自体は数十分で終わりますが、移動や書類作成を含めると半日〜1日は見ておく必要があります。不合格で再検査となれば、後日出直しとなることもあります。
・民間車検場(指定工場):1日〜2日
自社工場内に検査ラインを持っているため、朝出して夕方完了する「1日車検」に対応しているところも多いです。スピーディーに済ませたい場合におすすめです。
・認証工場・キッチンカー専門店:2日〜4日程度
整備を行った後、検査場へ持ち込んで検査を受けるため、数日は預ける必要があります。その分、じっくりと点検整備を行ってもらえるメリットがあります。
■部品交換がある場合は要注意
輸入車ベースのキッチンカーや、古い年式の車両の場合、交換部品の取り寄せに時間がかかることがあります。その場合、1週間以上車両が戻ってこないケースもあるため、事前の見積もり時に納期の確認が必須です。
初めて業者に依頼する場合やユーザー車検を受ける場合の流れを、ステップごとに解説します。
まずは車検満了日の1ヶ月前を目安に、整備工場や専門店に連絡を入れます。 キッチンカーであることを必ず伝え、「高さ」や「幅」が車検証通りか、構造変更が必要ないかなども相談しておくとスムーズです。複数の業者から見積もりをとる(相見積もり)と、費用の相場感が掴みやすくなります。
車検日が決まったら、車両の準備をします。 最も重要なのが「荷下ろし」です。後述しますが、積載物は全て降ろして空の状態にする必要があります。また、必要書類(車検証、自賠責、納税証明書など)が揃っているか確認しましょう。
予約した日時に車両を持ち込みます。 工場によっては、リフトアップして車両の下回りをチェックする際に立ち会わせてくれるところもあります。ここで「あとどれくらいブレーキパッドが残っているか」「交換すべき部品はどこか」を整備士と直接相談できると、納得感のある整備が受けられます。
プロによる点検整備が行われます。 ユーザー車検の場合は、自分でテスター屋(予備検査場)に行ってヘッドライトの光軸調整などを行ってから、陸運局の検査ラインに並びます。
検査に合格したら、新しい車検証とステッカー(検査標章)が発行されます。 費用を精算し、車を受け取ります。新しいステッカーをフロントガラスに貼り替えれば、車検完了です。これでまた2年間、安心して営業を行うことができます。
キッチンカー特有の「8ナンバー」について、もう少し深掘りしておきましょう。普通の乗用車とは違い、以下の2つの検査の違いを理解しておくことが重要です。
これからキッチンカーを作る場合や、4ナンバーから8ナンバーに変更する際に受ける最初の厳しい検査です。 車両のサイズ(長さ・幅・高さ)、重量、設備(シンクやタンク、調理台等)が、特種用途自動車の保安基準を満たしているか、検査員がメジャー等を使って徹底的に計測します。 この検査に合格して初めて、8ナンバーが交付されます。この時決定した車両重量やサイズが、今後の車検の基準となります。
すでに8ナンバーを取得している車両が、車検期間を更新するために受ける定期的な検査です。 この場合も、登録時と同じ設備が維持されているかのチェックはありますが、基本的には「安全に走行できるか(ブレーキ、ライト、排ガスなど)」の整備確認がメインとなります。 ただし、登録時から勝手に設備を変えていたり(シンクを外している等)、サイズが変わるような改造をしていたりすると、継続車検には通りません。
「安く済ませたい」という思いから準備不足で車検に臨み、痛い目を見るケースは後を絶ちません。ここでは、先輩オーナーたちが実際に経験した失敗談を反面教師として紹介します。
失敗1:荷物を降ろさず門前払い
あるオーナーは、営業時のままの状態で検査場へ行きました。しかし、検査官から「積載物が多すぎて正確な重量測定や検査ができない」と指摘され、その場で検査を拒否されてしまいました。結局、一度帰宅して全ての荷物を降ろし、再度出直すことになり、丸一日を無駄にしてしまったそうです。
失敗2:書類不備で3回やり直し
ユーザー車検に初挑戦した方の事例です。特種用途自動車に必要な書類の書き方がわからず、窓口で何度も訂正を求められました。さらに納税証明書も紛失しており、役所と陸運局を往復。慣れない手続きに疲れ果て、「これなら手数料を払ってプロに頼めばよかった」と後悔したとのことです。
失敗3:DIY棚が突起物扱いに
車内を使いやすくするために自作した棚が、車検の保安基準に適合しない「危険な突起物」とみなされて不合格に。ボルトで強固に固定していたため、検査場のライン上で取り外すこともできず、後日工具を使って撤去してから再検査を受ける羽目になりました。
キッチンカーの車検で最も質問が多いのが「どこまで荷物を降ろせばいいのか?」という問題です。この判断基準は、「固定設備」か「積載物」か、という点にあります。
降ろさなくて良いもの(固定設備) 構造変更申請時に登録された、ボルトや溶接で車両に固定されている設備は降ろしてはいけません。これらは車両の一部とみなされます。
・固定されたシンク、給排水タンク(固定済みの場合)
・固定された調理台
・換気扇(構造に含まれる場合)
降ろすべきもの(積載物) 営業のために積み込んでいる道具類は、すべて降ろして「空の状態」にするのが基本です。
・鍋、フライパン、食器類
・食材、調味料
・固定されていない発電機
・プロパンガスボンベ(※重要)
・タペストリーや看板、のぼり旗
・後付けの棚や収納ボックス(簡易的なもの)
特にプロパンガスや発電機などの危険物は、積んだままだと検査に通らない可能性が高いため、必ず降ろしておきましょう。
車検当日に「あれがない!」と慌てないよう、必要な書類を事前に準備しておきましょう。以下のリストをスクリーンショットなどで保存して活用してください。
【キッチンカー車検 必要書類リスト】
| チェック | 書類名 | 備考 |
|---|---|---|
| □ | 自動車検査証(車検証) | 原本が必要です。 |
| □ | 自動車損害賠償責任保険証明書 | 新旧2枚が必要になる場合があります。 |
| □ | 自動車税(種別割)納税証明書 | 電子化されていますが、提示を求められる場合があるため持参推奨。 |
| □ | 使用者の印鑑(認印) | 念のため持参しましょう。 |
| □ | 点検整備記録簿(メンテナンスノート) | 定期点検の記録用です。 |
| □ | ロックナットアダプター | ホイールにロックナットを使用している場合のみ必要。 |
| □ | 発炎筒 | 有効期限が切れていないか確認してください。 |
「少しくらい期限が過ぎても大丈夫だろう」「バレなければいい」という考えは非常に危険です。コンプライアンス意識を持つことは、事業を継続する上で最も重要です。
もし車検が切れた状態(無車検)で公道を走ると、違反点数6点(即免許停止)、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という非常に重い罰則が科せられます。さらに自賠責保険も切れている場合は、罰則が加算され、最大で1年6ヶ月以下の懲役または80万円以下の罰金となります。
また、8ナンバーの要件を満たしていない状態(キッチン設備を勝手に外して貨物車として使うなど)は「不正改造」とみなされます。整備命令や車両の使用停止命令が出る可能性があり、最悪の場合、営業許可の取り消しにも繋がりかねません。
では、実際に車検を受ける際、どこに依頼するのがベストなのでしょうか。 もし東京や大阪など、キッチンカーの営業が盛んなエリアにお住まいであれば、「地域名+キッチンカー 車検」などで検索し、近くの専門店を探してみるのも一つの手です。
それぞれの依頼先の特徴を比較表にまとめましたので、ご自身の状況に合わせて選んでみてください。
【キッチンカー車検 依頼先比較表】
| 依頼先 | 費用目安 | 手間・時間 | キッチンカー対応力 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|
| ユーザー車検 | 安い(法定費用のみ) | 大 (平日必須・知識必要) |
高(リスクあり) (全て自己責任) |
△ 上級者向け |
| 一般整備工場 | 中(+代行料) | 小 (預けるだけ) |
△ (断られる場合あり) |
〇 工場による |
| キッチンカー専門店 | 中〜高(専門技術料) | 小 (全てお任せ) |
◎ (構造要件も熟知) |
◎ 最も安心 |
表の通り、最も費用を抑えられるのが、自分で運輸支局や軽自動車検査協会に持ち込む「ユーザー車検」です。代行手数料がかからないため、法定費用+数千円の検査手数料だけで済みます。 しかし、平日の日中に自分で車を動かす必要があり、営業を休まなければなりません。また、検査ラインの操作や書類作成には専門知識が必要です。
前述の失敗事例にもある通り、素人が安易にユーザー車検を行うと、再検査になって余計な手数料がかかったり、不慣れな操作で検査機器を破損させたりするリスクがあります。「平日は忙しくて時間が取れない」「車のメカニズムには詳しくない」という方には、正直おすすめできません。結果的に、プロに頼むよりも高くつく(時間的損失を含む)可能性があります。
キッチンカーは特殊な架装が施されているため、一般的なディーラーや整備工場では「設備が邪魔で点検できない」「8ナンバーの基準がわからない」と断られるケースもあります。 そのため、キッチンカーの製作や販売を行っているサービスや、特殊車両に詳しい整備工場に依頼するのが最も確実です。プロであれば、厨房機器のチェックも含めてトータルでメンテナンスしてくれるため、安心して次の2年間を走ることができます。
長期的に安定した経営を続けるためには、信頼できるメンテナンスのパートナーを見つけておくことが大切です。 モビマルでは、キッチンカーの製作から出店場所の確保、そして運営中のメンテナンス相談まで幅広くサポートしています。「近くで信頼できる車検工場を知りたい」「車検のタイミングで内装のリニューアルも相談したい」といったお悩みにもお答えできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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