キッチンカーの商品を準備する「仕込み場所」が必要な場合があります。自治体によって不要なケースもありますが、基本的には仕込み場所は定められた場所で行う必要があり、自宅で仕込むことは原則として認められづらく、営業停止処分にもつながりかねません。
この記事では、正しい知識でリスクを回避し、自宅改装・レンタルキッチン・キッチンカー内での完結など、あなたの予算とスタイルに合った「正規の仕込み場所」を見つける方法を解説します。
この記事は、こんな人におすすめです
・自宅や賃貸マンションを仕込み場所にしたいが、許可条件が分からない方
・無許可で仕込みを行った場合のリスク(罰則)を正しく知っておきたい方
・「自宅改装」「車内完結」「レンタル」のどれが一番お得か比較したい方
・自分の売りたいメニューだと、どのレベルの設備が必要なのか具体的に知りたい方
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【都内開催】無料セミナー(実写見学会+講習会)の日程を確認する 全国どこでも受講可能!オンライン個別相談会はこちら(予約サイトが開きます)キッチンカーでの営業において、販売当日の車内調理工程以外の下準備、いわゆる「仕込み」を行う際、食品衛生法に基づき保健所から許可を受けた「仕込み場所」が必要になる場合があります。
この「仕込み」は自宅の台所ではできません。家庭用のキッチンは不特定多数の人に食事を提供する「業務用の衛生基準」を満たしていないためです。普段の生活で使用する場所と、商売として食品を扱う場所は、明確に分けられ、管理されていなければなりません。
このルールは自治体によって異なり、たとえば東京都の場合仕込み場所が必要ですが、他県では不要になる場合もあります。必ず営業場所を管轄する保健所に問い合わせましょう。
無許可の自宅キッチンで仕込みを行った場合、法令違反となります。万が一食中毒などのトラブルが発生した場合に発覚すれば、保健所の立ち入り検査や、営業停止処分や営業許可取り消しといった重いペナルティが課されるリスクがあります。大切なお店を守るためにも、法律に則った正しい場所を確保しましょう。
参考:厚生労働省:食品衛生法の改正について(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000197196.html)
「仕込み場所が必要」と言われても、具体的にどのような作業が該当するのか曖昧な方も多いでしょう。保健所の判断基準において、一般的に「仕込み」とみなされる行為は以下の通りです。
・野菜や肉のカット(包丁を使う作業全般)
・下味をつける、漬け込む
・加熱調理(煮込む、焼く、茹でるなど)
・冷却作業(加熱したものを冷ます)
・小分け包装
・生地作り(クレープ、パン、ワッフルなど)
・使用後の器具やタンクの洗浄・消毒
特に見落としがちなのが「器具の洗浄」です。「食材は全部カット済みの冷凍品を使うから仕込みはない」と思っていても、「営業終了後の寸胴やトングをどこで洗うのか?」と保健所で問われます。自宅のシンクで洗うことは原則NG(家庭の雑菌が混入するリスクがあるため)とされるため、結果的に「仕込み場所(=洗浄場所)」の確保が必要になるのです。
では、自宅を仕込み場所にするのは絶対に不可能なのかというと、そうではありません。居住スペースと完全に切り離し、保健所の基準を満たす改装を行えば許可を取得することは可能です。 ただし、そのためにはクリアしなければならない非常に高いハードルが存在します。
1.構造の問題
居住スペース(生活エリア)と、仕込みを行う場所が壁やドアで完全に区画されている必要があります。生活動線と交わってはいけません。「キッチンの入り口にアコーディオンカーテンをつけただけ」では許可が降りないケースが大半です。
2.設備の問題
手洗いや器具洗浄のためのシンクなど、家庭用とは別に業務用水準の設備を新設する必要があります。例えば、手洗い器は非接触型(レバー式やセンサー式)が求められることが一般的です。
3.材質の壁
床や壁は、水を流して丸洗いできるような耐水性のある材質(コンクリートやタイルなど)に変更しなければなりません。フローリングやクロス貼りのままでは許可が下りないケースがほとんどです。
「今の家をリフォームするのは構造上無理だが、庭や駐車場にスペースはある」という戸建て住まいの方には、敷地内にプレハブやユニットハウス、コンテナハウスを設置して、そこを仕込み場所として申請する方法があります。
これは既存の建物をいじるよりも、保健所の要件を一から満たしやすいため、近年注目されている手法です。
・生活空間と完全に分離できるため、保健所の許可がスムーズに通りやすい。
・自宅のリフォームよりも安価に済む場合がある(中古ユニットハウス等の活用)。
・自分の所有物になるため、毎月の家賃が発生しない。
・給排水工事が必須: ただ箱を置けば良いわけではありません。母屋から水道を引き、排水を下水道に繋ぐ工事が必要です。この配管工事費が意外と高額(数十万円〜)になることがあります。
・建築確認申請: サイズや設置場所(防火地域など)によっては、建築確認申請が必要になる場合があります。無断で設置すると違法建築となる恐れがあるため、必ず専門業者に確認しましょう。
・プロパンガスの契約: 加熱調理をする場合、家庭用のガス管を引くか、別途プロパンガス会社と契約してボンベを設置する必要があります。
「離れ」のような感覚で小さな厨房を作るイメージです。初期投資はかかりますが、長く続けるなら毎月のレンタルキッチン代を払うよりもトータルコストが安くなる可能性があります。
自宅改装やプレハブ設置、あるいは物件を借りて仕込み場所を作る際、具体的にどのような設備が必要になるのでしょうか。保健所の許可基準(施設基準)は非常に細かいです。計画段階で確認すべき詳細なチェックリストを作成しました。
※自治体により細則が異なるため、必ず着工前に図面を持って保健所に事前相談へ行ってください。
もしあなたのお住まいが持ち家ではなく、賃貸マンションやアパートの場合、ハードルはさらに跳ね上がります。
保健所の基準を満たすには前述の通り「壁や床の工事」「水道管の増設」など大掛かりなリフォームが必須ですが、一般的な賃貸物件の契約では、こうした改変は認められていないケースがほとんどです。
仮に許可が出たとしても、退去時には元の状態(家庭用キッチン)に戻す義務が発生します。改装費に加え、退去時の工事費も莫大になるため、コスト面で現実的ではありません。
賃貸物件を居住したまま仕込み場所として改造するのは「現実的にはほぼ不可能」と考えておいた方が良いでしょう。賃貸派の方は、後述する「車内完結」か「シェアキッチン」を検討するのが賢明です。
キッチンカーの設備自体を強化して、仕込み場所を「不要」にするという選択肢があります。
具体的には、キッチンカーに搭載する給排水タンクの容量を増やす方法です。多くの自治体では、40Lや80L程度のタンク容量では簡易な調理しか認められませんが、200Lの大容量タンクを搭載し、十分な洗浄設備を整えることで、車内での「仕込み行為」が許可されます。
これが認められれば、別途仕込み場所を契約する必要がなくなり、固定費を大幅に削減できます。
最初から200Lタンクを搭載すればいいかと思われるかもしれませんが、注意点があります。
・1.積載重量の問題
水200Lは単純計算で200kgです。これに排水タンク、シンク、冷蔵庫、食材、スタッフの体重が加わります。軽トラックベースのキッチンカー(最大積載量350kg)の場合、200Lタンクを満タンにすると積載オーバーになる可能性が高く、非常に危険です。1トン車や1.5トン車ベースの車両を選ぶ必要があります。
・2.給排水の労力
「毎日200Lの水を汲み、200Lの排水を捨てる」作業は想像以上に重労働です。ホースが届かない場所では、ポリタンクで何往復もしなければなりません。この作業負担で腰を痛めて辞めてしまうオーナー様もいらっしゃいます。
・3.車内スペースの圧迫
200Lのタンクは巨大です。給水・排水で計400L分のスペースが取られるため、冷蔵庫や作業台のスペースが削られます。
とはいえ、一度許可を取れば「どこでも仕込める」「家賃がかからない」というメリットは計り知れません。体力に自信があり、車両サイズに余裕がある場合は、最もコストパフォーマンスが良い選択肢と言えます。
自宅も難しく、車両のスペック的にも車内完結が難しい場合、最も現実的でポピュラーな解決策となるのが「外部施設の利用」です。すでに許可基準を満たしている施設を借りることで、初期投資を抑えてスムーズに開業することができます。
シェアキッチンやレンタルキッチンは、複数の利用者で厨房設備を共有するサービスです。すでに保健所の許可基準を満たした設備が整っているため、自分で工事をする必要がなく、契約を済ませれば仕込み場所として申請できます。
「知り合いの居酒屋のキッチンをアイドルタイム(営業時間外)だけ貸してもらう」という方法も有効です。しかし、口約束だけで進めるのは危険です。
・責任の所在: 万が一食中毒が出た場合、その飲食店の営業許可にも傷がつく可能性があります。
・光熱費・消耗品: 「水道代が急に上がった」などで揉めるケースがあります。
・使用承諾書: 保健所の申請には、店舗オーナーの署名・捺印がある「使用承諾書」が必要です。
親しい仲でも、必ず契約書を交わし、リスクや費用負担について明確にしておくことが、長く関係を続けるコツです。
「結局、自分はどうすればいいの?」という方のために、提供メニューと調理工程から逆引きできる選択肢マップを作成しました。ご自身の提供したい商品と照らし合わせてみてください。
工程: 大量の野菜カット、長時間煮込む、鍋ごと冷却、冷蔵保存。
推奨: シェアキッチン or 自宅改装(プレハブ)
理由: 車内での大量の煮込みは、ガス容量や車内温度上昇の問題で過酷です。また、寸胴鍋を洗うための大きなシンクが必要なため、広々とした外部キッチンが適しています。
工程: 冷凍のまま車に積み込み、現地で揚げるだけ。
推奨: 車内完結(40L〜80Lタンクでも可能な場合あり)
理由: 「仕込み(カットや下味)」が発生しないため、多くの自治体で「簡易調理」として認められやすいです。ただし、揚げ油の処理や器具洗浄の場所は問われるため、200Lタンクにしておくとより安全です。
工程: 小麦粉、卵、牛乳を混ぜて生地を作る。フルーツをカットする。
推奨: 車内完結(200L) or シェアキッチン
理由: 「粉を混ぜる」「フルーツを切る」行為は仕込みとみなされます。自宅でやってしまうとNG。車内でやるなら200Lの許可が必要です。 「冷凍ホイップ」「カット済み冷凍フルーツ」「市販のクレープミックス(水だけ混ぜればOKのもの)」を使えば、仕込み工程を極限まで減らし、簡易設備(80L程度)でも許可が下りる可能性があります。
工程: コーヒーを淹れる、シロップを割る。
推奨: 車内完結(40L〜80L)
理由: ドリンク提供は比較的衛生リスクが低いとされ、簡易的な設備で許可が降りやすいジャンルです。ただし、牛乳(乳製品)を扱う場合は管理に注意が必要です。
ここまで3つの選択肢を紹介してきましたが、結局どれを選べばいいのでしょうか。それぞれの特徴を比較表にまとめましたので、ご自身の予算や将来の計画と照らし合わせてみてください。
【仕込み場所 3パターン徹底比較表】
| 項目 | 自宅改装・プレハブ (持ち家) | 200Lタンク (車内完結) | シェアキッチン |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 高 (50〜200万円) 工事・プレハブ購入費 |
中 (10〜30万円) タンク・シンク増設費 |
安 (数万〜10万円) 入会金・契約金のみ |
| ランニングコスト | 安 (光熱費のみ) | 安 (ガソリン・水代のみ) | 高 (月額3〜10万円) または時間貸し料金 |
| 許可取得の手間 | 大 (図面作成・工事・立入検査) | 中 (車両検査と同時に完了) | 小 (施設の許可証コピー等の提出) |
| 賃貸住まい | ほぼ不可 | 可能 | 可能 |
| 向いている人 | ・持ち家(戸建)の人 ・長期的に安定経営したい人 |
・大量仕込みが必要なメニュー ・体力に自信がある人 ・積載量のある車を選べる人 |
・固定費を極限まで削りたい人 ・初期投資を抑えたい人 ・まずは週末起業から始めたい人 ・複雑な調理が必要な人 |
1. コスト(初期費用・固定費)で選ぶ
とにかく開業資金を安く抑えたいのであれば、シェアキッチンがおすすめです。数十万円から数百万円かかる工事費や設備費がかからず、月々の利用料だけで済みます。逆に、長期的にキッチンカーを続ける覚悟があり、毎月の固定費を極限まで削りたいのであれば、最初に投資をして200Lタンク仕様にするのが有効です(持ち家の場合は改装も選択肢に入ります)。
2. メニューと調理工程で選ぶ
提供するメニューによっても最適な場所は変わります。「煮込み料理を作る」「大量の野菜をカットする」といった重飲食系のメニューなら、広くて設備の整ったシェアキッチンが作業効率の面で有利です。一方で、「冷凍食材を揚げるだけ」「ドリンクがメイン」といった比較的シンプルな工程であれば、狭い車内でも十分対応できるため、車内完結型が向いていると言えるでしょう。
仕込み場所探しは、お住まいの地域や提供したいメニュー、選ぶ車両によって正解が異なります。また、保健所のルール(ローカルルール)も自治体ごとに微妙に違うため、自分一人で判断するのは不安がつきまとうものです。
特に、「ネット記事にはこう書いてあったのに、管轄の保健所に行ったらダメだと言われた」というケースは後を絶ちません。車両を作ってしまってから「タンク容量が足りない」と気づいても、作り直しには多額の費用がかかります。
そんな時は、キッチンカーのプロに相談するのが一番の近道です。モビマルでは、あなたのエリアの最新の仕込み場所事情や、開業に必要な許可申請のノウハウを無料のセミナーでお伝えしています。「自分の場合はどうするのがベスト?」と迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。
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