名古屋に実店舗を構え、市内を中心に5台のキッチンカーで唐揚げ専門店「からあげ178」を展開する、株式会社稲葉家。このたびモビマル主催の2025年度下半期「ビジョン賞」※を受賞しました。
今回は、創業者である父・稲葉篤さん(以下「篤」)と、現場を統括する長男・稲葉稜太さん(以下「稜太」)に、15年にわたり積み重ねてきた「選ばれる」キッチンカーづくりと、家族の絆から生まれたハラル対応の唐揚げについて、お話を伺いました。
※モビマル ビジョン部門表彰について
モビマルのビジョン「移動販売を活用した地域創生」に貢献し、それに即した行動を多くとられたキッチンカー(移動販売)事業者をモビマルが半期ごとに表彰しています。
からあげ178の歴史は、名古屋市内にあった実店舗から始まりました。
篤)純粋に妻の唐揚げが好きで、15年ほど前に名古屋でお店を始めましたが、最初の1年は鳴かず飛ばずで。そんな時に、たまたま知り合いから「キッチンカーが空いているので稲葉さん唐揚げをやってみない?」と声をかけてもらったのがきっかけでした。
からあげ178の最大の魅力は、奥様が手がける多彩なタレです。
篤)うちの妻は唐揚げもそうなんですが、いろんなタレを作るのが本当に上手なんです。甘だれの唐揚げを食べた時、「これは絶対いける」と思いました。
さっぱり系のネギ塩や味噌だれをはじめ、これまでにはカレー味やプレーンなど、時々に合わせてさまざまなタレを開発。現在ではチリマヨやレモンチーズといった新しい味も登場しています。
唐揚げは、タレでいろんなアレンジができるのが面白いんです。当時は、いろんなタレを揃えた唐揚げ屋さんはほとんどありませんでした。
もともと別の仕事をしていた篤さんが、唐揚げ事業を始めたのには、もう一つの理由もありました。
篤)妻の体調があまり良くなくて。何か一緒にできることはないかと考えた時に、夫婦で一緒に商売をしたいと思ったんです。料理が上手な妻が味付けまでやってくれれば、揚げるのは私でもできる。それなら唐揚げ屋をやろうと考えました。
キッチンカー事業を長年続けてきたからあげ178が、モビマルに登録したきっかけは、モビマル東海サービスの担当者との以前からのつながりでした。
篤)モビマル東海サービスの櫻井さんとは、モビマルを始める前から知り合いでした。「東海地区でこういう話があるんだけど」と声をかけてもらい、それなら全面的に協力しようと思いました。
東海地区はキッチンカー事業者が多く、出店の機会を確保することは簡単ではないという課題もあります。
篤)正直、困ってないって言ったら嘘になります。エントリーしても出られるとは限らない。我々も、クライアントさんから選んでいただく立場なんです。
そうした中で活用いただいているのが、モビマルのサブスクリプションサービス「モビ放題」です。
稜太)モビ放題に入ると、平日によく出店させていただいている専門学校などで出店料が無料になります。その分、学生さんに割引で提供できる。少しでもお得に食べてもらえるのは嬉しいですね。現在4台のキッチンカーを保有し、その出店のうち約半月分がモビマル経由のものです。平日は専門学校や駅前、週末はイベントを中心に展開しています。
唐揚げを扱うキッチンカーは数多くある中で、からあげ178が大切にしているのは「選ばれる」存在になることです。
篤)イベントに出ると、唐揚げのキッチンカーは複数台出ていることも珍しくありません。それでも「唐揚げなら178だよね」と言ってもらえる存在になりたい。だからInstagramの投稿も行っていますし、フォロワーの方々を大切にしています。その時その時で売れればいいわけではなく、選んでもらえるキッチンカーになることをすごく意識しています。 小手先で「専門店」を名乗るような店と一緒にされたくない。どこに行っても、唐揚げに絶対の自信を持って提供しています。
一方で、唐揚げ業界を取り巻く環境は決して楽ではありません。
篤)この15年で、鶏肉や油、小麦粉の価格は大幅に上がりました。ガソリン代も含めて、昔ほど「唐揚げで儲かる」という旨味はなくなってきていると思います。だからこそ、これから新規で参入する人は減っていくかもしれません。
からあげ178を語る上で欠かせないのが、2019年に取り組み始めたハラル対応です。そのきっかけは、家族の出来事でした。
篤)長女が結婚した相手がイギリス人のムスリムの方だったんです。国際結婚で、娘もイスラム教徒になりました。
その時に、彼と話していて気づいたんです。冷凍のもも肉自体はほとんどハラルなんですが、調味料に使うみりんや料理酒がダメだった。それなら食べられる唐揚げを作ろうと、うちの妻が言い出して。
調味料を見直して作った唐揚げは、思いがけない結果をもたらしました。
篤)出来上がったら「これ、前よりおいしい!」と好評だったんです。味への影響はほとんどなくて、むしろ良くなったくらいでした。
現在、実店舗の週末イートインでは、来店客の半数以上がムスリムのお客様です。
Googleの口コミでも、外国人の方が星5つで「めちゃくちゃ美味しい」と書いてくださっています。キッチンカーにも実店舗にも、ムスリムのお客様が足を運んでくれています。
からあげ178が目指すのは、ムスリムのお客様だけに向けた専門店ではなく、誰もが自然に楽しめる場所であることです。
篤)最初からムスリムの方を狙った唐揚げ屋として展開していたら、おそらく今とは違っていたと思います。からあげ178は日本人のお客様もたくさん来てくれていますし、その中に外国人の方も自然にいる。それが我々のハラル対応の結果なんです。「ハラルの唐揚げを作ってくれてありがとう」と感謝されることが本当に多いですね。
今、ハラル対応の飲食店というと、焼肉やラーメンが多い。でも、日本中を旅するムスリムの方にとっては、もう食べ飽きてしまっている場合もある。そんな時に「名古屋には美味しい唐揚げがあるよ」と、箸休めのように寄ってもらえたら嬉しいです。
からあげ178のキッチンカーは、外国人が多い大学や専門学校への出店や、外国人スタッフが多く働く工場など、さまざまな場所で高く評価されています。
篤さんが唐揚げの事業を始めたのは33〜34歳の頃。それまでは営業職を中心に歩んできたといいます。
篤)人生の後半で何をやろうかと考えた時に、妻と一緒に、ゼロから何かを作っていく姿を子どもたちに見せたいと思ったんです。当時、稜太たちはまだ中学生や高校生くらいでした。
篤さんには5人の子どもがおり、現在は長女、長男の稜太さん、次男の3人が事業に携わっています。現場運営の中心を担う稜太さんは、出店場所の選定や情報収集、SNS発信などを担当しています。
稜太)私が担当している現場では、出店場所の情報収集を重視しています。
最初から売上を求めすぎず、まずは出店してみる。良かったところ、ダメだったところを毎年見直しながら、良かった部分を発展させていく。その積み重ねが、右肩上がりの売上につながっているんじゃないかと思います。
情報発信については、毎週末はもちろん、1週間・1ヶ月のスケジュールをSNSで告知しています。
篤)コロナ明けに売上は一気に伸びました。それも稜太のおかげですね。
稜太)一番大切にしているのは、その日その場所で一人でも多くのお客様に「美味しかった」と思ってもらうこと。それが結果的に、からあげ178を好きでいてくれる人を増やしていくと思っています。フェスに行くと、大学生くらいのお客様が、「あ、178、うちの学校に来てた」と会話してくれているのを聞くと、日々の積み重ねが伝わっているんだなと感じます。
家族で築いてきたブランドは、これからさらに広がろうとしています。
篤)キッチンカーは車ですから、どこにでも行けるのが魅力です。今は東海地区が中心ですが、今後は関西方面にもエリアを広げていきたい。
それに、キッチンカーに留まらず「からあげ178」を一つのブランドとして育てていきたいんです。ハラル対応もしているので、いつか海外にも展開できたらと思っています。
モビマルが「からあげ178」をビジョン賞に選出した理由は、単に長年キッチンカーを運営しているからではありません。
「唐揚げだったら178だよね」と言われる存在を目指し、一人ひとりのファンづくりを大切にしながら、学校やイベント会場、駅前など地域のさまざまな場所でお客様との接点を積み重ねてきたこと。そして、ハラル対応に取り組むことで、ムスリム・非ムスリムを問わず誰もが安心して食事を楽しめる環境づくりに挑戦してきたことを高く評価しました。
実際に、ハラル対応は留学生が多い学校への出店や外国人スタッフが多く働く職場などで新たなニーズを生み出しており、「誰もが安心して食べられる」という価値につながっています。
地域に根差した活動を続けながら、多様な人々が集う場を食を通じて生み出していること。これらは、モビマルの掲げる「移動販売を活用した地域創生」を体現する取り組みであると考えています。
今後も、からあげ178のさらなる活躍を期待しています。
名古屋市東区に実店舗を構える唐揚げ専門店。家族経営で、現在4台のキッチンカーを展開。2019年からハラル対応を行い、ムスリム・非ムスリムを問わず多くのお客様に親しまれています。
公式サイト : https://karaage178.jp/