キッチンカーにとって、冷蔵庫は食品衛生に関わる最重要設備のひとつであり、保健所の営業許可取得の要でもあります。選び方を間違えると、許可が下りなかったり、真夏に食材が傷んで営業停止になったりするリスクさえあります。
この記事では、キッチンカー業界の現場をよく知るモビマルが、冷蔵庫の必要性から具体的な選び方、そして運用ノウハウまでを分かりやすく解説します。
この記事は、こんな人におすすめです
・キッチンカー開業に向けて、必要な設備を調べている方
・保健所の営業許可基準における冷蔵設備の要件を知りたい方
・自分のキッチンカーに合う冷蔵庫や電源の選び方に迷っている方
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提供するメニューと管轄する保健所の基準によりますが、食品衛生上の観点から「ほぼ必須」であり、特に日本の高温多湿な夏場を考慮すると「必須」と断言してよいでしょう。
キッチンカーは固定店舗と異なり、食材の温度も外気の影響を受けやすくなっています。お客様に安全な食事を提供するプロとして、温度管理は避けて通れない課題です。
多くの自治体の保健所では、キッチンカーの営業許可申請において、生鮮食品や要冷蔵の食材を扱う場合、適切な冷蔵設備の設置を許可基準に含めています。
具体的には、食材を摂氏10度以下(冷凍の場合はマイナス15度以下)で保存できる設備が求められます。一般的には「コールドテーブル」と呼ばれる業務用冷蔵庫や、温度計が付いた確実な冷蔵設備が推奨されます。これは食中毒を防ぐための最低限のラインです。
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地域によって保健所の担当者の判断やローカルルールには差があります。ある地域では厳格に業務用を求められる一方、別の地域ではポータブル冷蔵庫でも固定されていればOKというケースもあります。しかし、全国どこでも共通しているのは「安全に温度管理ができること」です。
もちろん、例外もあります。例えば、常温保存が可能な焼き菓子のみを販売する場合や、缶やペットボトルのドリンクのみを常温で扱う場合など、メニュー次第では冷蔵庫が不要と判断されることもあります。
では、「クーラーボックス」での代用は可能なのでしょうか。結論としては、一部の簡易的な営業や、短時間のイベント出店などで認められるケースはゼロではありませんが、あくまで「補助的」なものと考えるべきです。
クーラーボックスは氷や保冷剤が溶ければ温度が上昇します。真夏の車内は想像を絶する暑さになり、クーラーボックスだけで一日中、食材の安全な温度帯をキープするのは極めて困難です。もし食中毒事故が起きれば、営業停止だけでなく、ブランドの信頼も失墜します。安全と信頼を買うという意味でも、電気で動く冷蔵庫の導入を強く推奨します。
キッチンカー用の冷蔵庫選びは、家庭用とは全く異なる視点が必要です。重視すべきは「電源・サイズ・冷却方式・価格・冷凍機能」の5つのポイントです。これらを押さえておけば、購入後に「電源が入らない」「冷えない」といった失敗を防ぐことができます。
まず何よりも先に確認すべきは電源です。キッチンカーで使える電力は、ポータブル電源や発電機に限られます。家庭用コンセント(AC100V)がそのまま使える場合もありますが、消費電力が大きすぎるとブレーカーが落ちたり、バッテリーがすぐに切れたりします。
そのため、消費電力の低いモデルや、車のシガーソケットなどから電源を取れる「DC12V/24V対応」のモデルを選ぶのが賢い選択です。AC電源で動かす場合でも、省電力設計のインバーター制御などが搭載されているかを必ず確認しましょう。
次にサイズです。キッチンカー、特に軽バンタイプなどの限られたスペースでは、数センチの差が命取りになります。作業動線を潰さないサイズでありながら、1日の営業に必要な食材を保管できる容量が必要です。
作業台の下に収まる「コールドテーブル型」であれば、上を作業スペースとして有効活用できます。一方、場所を移動させやすい「ポータブル型」であれば、レイアウトの自由度が高まります。提供数から逆算して、何リットルの容量が必要かをシミュレーションしてみましょう。
冷蔵庫の心臓部である冷却方式には、大きく分けて「コンプレッサー式」と「ペルチェ式」があります。キッチンカーで選ぶべきは、間違いなく「コンプレッサー式」です。
それぞれの違いを以下の表にまとめました。
| 比較項目 | コンプレッサー式 | ペルチェ式 |
|---|---|---|
| 冷却能力 | ◎ 高い 外気温に関わらず設定温度まで冷える |
△ 低い 外気温に影響されやすく、真夏は危険 |
| キッチンカー適性 | 推奨 食品衛生管理に適している |
非推奨 ドリンクの保冷程度なら可 |
| 価格 | やや高め | 安価 |
| 音・振動 | あり(コンプレッサー稼働音) | 静か |
| 仕組み | 冷媒ガスを圧縮して冷却(家庭用と同じ) | 電気を通すと冷える半導体を使用 |
コンプレッサー式は家庭用冷蔵庫と同じ仕組みで、冷却能力が高く、夏場の暑い車内でも設定温度までしっかり冷やしてくれます。一方、ペルチェ式は静音性に優れ安価ですが、外気温に左右されやすく、冷却パワーが弱いため、真夏のキッチンカーでの使用には不向きです。
開業資金を抑えるために気になるのが価格です。新品の相場としては、高機能なポータブル型なら3万円から8万円程度、業務用コールドテーブルなら10万円以上が一般的です。
ここで選択肢に入ってくるのが「中古」です。中古厨房機器店やオークションサイトを活用すれば、初期費用を大幅に抑えられます。ただし、プロの視点からアドバイスさせていただくと、中古を選ぶ際は「製造年式」「ドアパッキン」「動作音」の3点を必ずチェックしてください。
製造から5年以内の比較的新しいものを選び、冷気漏れの原因となるドアパッキンの劣化や割れがないかを確認します。また、電源を入れた際に異音がしないか、規定温度までスムーズに下がるかも重要な確認ポイントです。安すぎるものには理由がありますので注意しましょう。
かき氷やスムージー、あるいは冷凍食材を使用する場合、冷凍機能が必要です。冷蔵庫に小さな冷凍スペースがついているタイプもありますが、頻繁に開け閉めするキッチンカーでは温度が上がりやすく、アイスクリームなどが溶けてしまうことがあります。
本格的に冷凍食材を扱うのであれば、冷凍機能付きの冷蔵庫ではなく、「専用の冷凍庫(ストッカー)」を用意するか、冷蔵と冷凍が完全に分かれている2室タイプのモデルを選ぶ方が、温度管理が安定し安心です。
素晴らしい冷蔵庫を選んでも、それを動かす電気がなければただの箱です。移動販売において冷蔵庫を安定稼働させるための電源確保には、主に3つの方法があります。
近年性能が向上しているポータブル電源は、静かで排気ガスも出ないため、場所を選ばず使用できるのが最大のメリットです。ただし、冷蔵庫を一日中稼働させるには、それなりのスペックが求められます。
目安としては、容量が1500Wh以上の大容量モデルを選ぶと安心です。また、冷蔵庫はコンプレッサーが作動する瞬間に大きな電力(起動電力)を使うため、定格出力にも余裕があるモデルを選びましょう。ソーラーパネルと組み合わせて、営業中に充電しながら使うのも一つの手です。
クレープや揚げ物などで他にも電気を多く使う場合や、長時間の営業には発電機が頼りになります。安定して高出力を供給できるため、冷蔵庫の冷却も安定します。
選ぶ際は、パソコンや精密機器(基盤が入った冷蔵庫含む)にも使える「インバーター式」が必須です。ただし、発電機は騒音と排気ガスが出るため、出店場所によっては使用禁止の場合があります。また、ガソリンの管理が必要になる点も考慮しましょう。
キャンピングカーのように、車両にサブバッテリーを搭載し、走行中のエンジンの力で充電する方法です。エンジンを切ってもサブバッテリーから冷蔵庫へ電気を供給できるため非常に効率的です。しかしながら、走行中に充電できる電力と使用電力が釣り合わないことが多く、実務に向いた方法ではありません。
また、システムの構築には専門的な工事が必要で、導入コストが高くなりがちです。DIYで行う方もいますが、配線トラブルによる火災リスクもあるため、採用する場合はプロに依頼することをおすすめします。
キッチンカーの発電機に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。
▼キッチンカーにおすすめの発電機はどれ? 特徴と選び方を解説!
ここでは、モビマルの経験に基づき、キッチンカーで実際に活躍している実績あるモデルのタイプを用途別にご紹介します。それぞれの特徴を比較表にまとめましたので、ご自身のスタイルに合わせて選んでください。
| 機種タイプ | 特徴・メリット | 向いている車種・用途 | 価格相場(新品) |
|---|---|---|---|
| ① ポータブル型 | ・DC12V対応で電源確保が楽 ・持ち運び可能で積み下ろし自在 |
軽バン・軽トラ イベント出店がメインの方 |
3万~8万円 |
| ② コールドテーブル | ・天板を作業台として使える ・大容量で耐久性が高い |
1tトラック・大型車 本格調理をする方 |
10万円~ |
| ③ 専用冷凍庫 | ・-20℃以下の強力冷凍 ・冷蔵庫と分けることで温度安定 |
かき氷・スムージー 冷凍ストックが多い方 |
3万円~ |
軽バンタイプや、機材の積み下ろしが発生する方には、エンゲル(澤藤電機)などの「ポータブル冷蔵・冷凍庫」が圧倒的に支持されています。
DC12V/24Vに対応しており、車のバッテリーから直接電源が取れる上、省電力設計で非常にタフです。蓋が上開きのため冷気が逃げにくく、揺れにも強い構造になっています。冷蔵・冷凍の温度設定が細かくできるモデルであれば、メニュー変更にも柔軟に対応できます。
トラックタイプや、車内で調理スペースを広く取りたい方には、ホシザキやフクシマガリレイといった業務用メーカーの「コールドテーブル(台下冷蔵庫)」が定番です。
天板がステンレスの作業台になっているため、限られた車内スペースを有効活用できます。業務用ならではの耐久性と冷却能力は折り紙付きです。中古市場でも流通量が多く、状態の良いものを見つけやすいのもメリットです。ただし重量があるため、車両への固定は強固に行う必要があります。
冷凍食材のストックが多い、あるいは夏場にかき氷を提供する場合は、ハイアールなどの上開き式「冷凍ストッカー」や、冷凍専用のポータブル庫がおすすめです。
特にマイナス20度以下まで急速に冷やせるモデルであれば、食材の鮮度を落とさずに保管できます。冷蔵庫とは別に用意することで、冷蔵庫の開閉による温度変化の影響を受けず、溶けやすい氷やアイスクリームをしっかり守ることができます。
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冷蔵庫は「買って置いて終わり」ではありません。移動販売特有の環境で使用するため、設置と運用にもプロのノウハウが必要です。
真夏の車内は50度近くになることもあります。冷蔵庫の周囲に熱がこもると放熱ができず、どれだけ高性能な機種でも冷えなくなってしまいます。
対策として、冷蔵庫の放熱スペース(特に背面や側面)を十分に確保することはもちろん、車内に換気ファンを回して熱気を逃がす、冷蔵庫に直射日光が当たらないようにすだれや断熱材でカバーするなどの工夫が有効です。
走行中の振動は冷蔵庫の大敵です。固定が甘いと、カーブやブレーキのたびに本体が動いて壁に激突したり、最悪の場合は転倒して大事故に繋がったりします。
ラッシングベルトやL字金具を使用して、車両の床や壁に確実に固定してください。また、冷蔵庫は水平でないと正常に動作しない場合があるため、設置時には水平器を使って傾きがないかを確認しましょう。
意外と盲点なのが、営業しない日の扱いです。食材を入れっぱなしにして電源を切り、翌週の出店まで放置するのは非常に危険です。
衛生管理の観点から、食材は原則として自宅の冷蔵庫へ移し替えるのがベストです。もし冷蔵庫内に食材を残す場合は、外部電源コードを使って自宅のコンセントに繋ぎ、常に稼働させておく必要があります。電気代や手間を考えると、その日の食材はその日のうちに売り切るか、自宅へ持ち帰る習慣をつけることが、結果としてリスク回避につながります。
冷蔵庫ひとつとっても、電源容量との兼ね合いや保健所の基準など、考えるべきことは山積みです。これらを一人で悩みながら進めるのは大変な労力です。キッチンカーの開業準備や機材選びに迷ったら、ぜひモビマルにご相談ください。
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