「せっかく購入したキッチンカーが、保健所の検査に通らなかった」。 これは、決して他人事ではありません。夢の開業を目前にして、設備の不備で再工事を余儀なくされ、数十万円の追加費用と数ヶ月の時間を失うケースが後を絶たないからです。
キッチンカーの営業許可は、提供するメニューや営業する地域によって、必要な設備基準(特に給排水タンクの容量やシンクのサイズ)が複雑に異なります。 ネット上の古い情報や、「たぶん大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。
特に近年は「東京で営業したい」「埼玉や千葉にも遠征したい」といった広域展開を考えるオーナーが増えていますが、そこには「ローカルルールの壁」が立ちはだかります。また、「軽トラサイズでラーメンをやりたいが、200Lタンクは積めるのか?」といった車種と設備のバランスに悩む方も多いでしょう。
この記事では、年間数多くのキッチンカー開業支援を行ってきたモビマルが、2026年最新の法改正および地域ごとの運用実態に対応した営業許可の取得手順をプロの視点で解説します。 申請の基本的な流れから、絶対に失敗できないタンク容量のシミュレーション、面倒な書類作成のコツ、そして主要都市ごとのローカルルールの詳細まで、合格への最短ルートを包み隠さず提示します。
この記事は、こんな人におすすめです
・これからキッチンカーを購入・製作しようと考えている方
・「40L・80L・200L」など、必要な給排水タンクの容量を知りたい方
・東京、神奈川、埼玉、大阪、兵庫など、特定地域での厳しい許可ルール(シンクサイズ等)を知りたい方
・軽トラか1トン車か、車種選びと許可基準の関係で悩んでいる方
・行政書士に頼むべきか、自力で申請するか、費用の相場を知りたい方
・保健所の事前相談で何を話せばいいか、具体的なチェックリストが欲しい方
記事を読み終える頃には、保健所の担当者と対等に話せるだけの知識が身につき、自信を持って開業準備を進められるようになっているはずです。
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キッチンカー(移動販売車)で食品を調理・販売するためには、営業する地域を管轄する保健所から「営業許可」を取得することが法律で義務付けられています。無許可で営業した場合、食品衛生法違反となり、営業停止処分や罰則の対象となるだけでなく、何よりお客様からの信頼を失ってしまいます。
これから開業する方がまず押さえておくべきなのは、2021年6月の食品衛生法改正による変化です。
かつては、自治体ごとに営業許可の基準がバラバラで、「A市ではOKだった設備が、隣のB市ではNG」という事態が頻発していました。しかし、この改正によって施設基準が全国でほぼ統一され、原則として同じ基準で審査が行われるようになりました。また、かつて細分化されていた業種が「飲食店営業」などに集約され、手続き自体はシンプルになったと言われています。
しかし、ここで安心するのは早計です。
法的な枠組みは統一されましたが、実際の運用や細かな解釈(例えば、シンクの具体的な寸法や、タンク容量とメニューの関係など)については、依然として保健所長に裁量権があり、地域ごとの「ローカルルール」が残っている場合があります。 そのため、法律の基本を押さえつつ、「自分が営業する地域の保健所が何を求めているか」を正確に把握することが、許可取得の第一歩となります。
参考:
東京都福祉保健局「新たに食品に関する営業を始められる皆さんへ ー自動車関係営業許可申請等の手引ー
営業許可の取得は、書類を出すだけの事務手続きではありません。車両の設計段階から保健所との擦り合わせが必要な、長期的なプロジェクトです。全体でおよそ2ヶ月弱の期間を見ておくのが安全です。
特に重要なのは、「車両を購入・製作する前」に行動を起こすことです。ここでは、失敗のない最短ルートでの進め方を5つのステップで解説します。
まず最初に取り組むべきは、「食品衛生責任者」の資格取得です。営業許可を申請する際には、各車両に1名以上の食品衛生責任者を置くことが義務付けられています。
この資格は、各都道府県の食品衛生協会が開催する「養成講習会」を受講することで取得できます。講習は1日で終わりますが、問題は「予約の取りにくさ」です。東京や大阪などの都市部では、1〜2ヶ月先まで予約が埋まっていることも珍しくありません。車両が完成しているのに資格がないために営業できない、という事態を避けるためにも、開業を決意したらすぐに講習会の予約を入れましょう。
なお、調理師、栄養士、製菓衛生師などの国家資格を持っている方は、講習を受けなくても食品衛生責任者になることができます。手元に免許証があるか確認しておきましょう。
営業許可取得のプロセスにおいて、最も重要で、絶対に飛ばしてはいけないのがこの「事前相談」です。タイミングは必ず「車両を購入・製作する前」です。
購入予定の車両の図面(ラフ画でも可)や、提供したいメニューのリストを持って、営業予定地を管轄する保健所へ足を運びます。そこで、「この設計で許可が下りるか」「やりたいメニューに対してタンク容量は足りているか」を確認し、担当者から合意を得るのです。
ここでの合意なしに車両を作ってしまうと、納車後に「シンクのサイズが足りない」「給水タンクの容量不足」などの指摘を受け、高額な改修費用が発生するリスクがあります。事前相談は、いわば保健所との「答え合わせ」の場です。
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キッチンカーでは、営業する車両内だけでなく、食材の下準備を行う「仕込み場所」にも営業許可が必要です。原則として、自宅のキッチンは仕込み場所として認められません。
仕込み場所として認められるには、以下のような条件を満たす必要があります。
・営業許可を取得した厨房施設(飲食店や食品製造工場など)
・自宅とは別に、専用の設備を整えたキッチン
営業許可を取得した知人の店舗を借りる、レンタルキッチンを利用する、などが一般的な解決策です。事前相談の際に、仕込み場所についても相談しておくと安心です。
事前相談で得た情報を基に、キッチンカーを製作・購入します。保健所の基準を満たす設備を備えることが最優先です。
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保健所での事前相談で得た基準(フィードバック)を反映させた車両を製作、または購入します。
ここで重要になるのが「ベース車両の選び方」です。 例えば、「車内で本格的なラーメンを作りたいから200Lの給排水タンクが必要」という場合、軽トラックベースのキッチンカーでは物理的・法的に不可能なケースがほとんどです。
■軽トラ vs 1トン車(普通車)選びのポイント
・軽トラックベース 小回りが利き、維持費も安いのが魅力です。しかし、最大積載量は350kgです。ここにキッチンボックス、機材、スタッフ、食材を載せると、余裕はほとんどありません。そのため、40L〜80L程度のタンクで営業できる軽食やカフェメニューに適しています。
・1トン車(普通車トラック)ベース 積載量に余裕があるため、200Lの大型タンクや重い厨房機器(ガスオーブンなど)を搭載可能です。本格的な調理を行う場合や、複数人でオペレーションを行う場合はこちらが必須となります。
これから車両を手配する場合は、モビマルのようなキッチンカー専門の製作会社に依頼することをお勧めします。専門業者は最新の法改正や保健所の傾向を熟知しているため、最初から「許可が取れる仕様」で車両を製作することが可能です。
車両の完成が見えてきたら、正式な申請書類の準備に入ります。申請書類は数が多く、記入内容も専門的になるため、ここで多くの人がつまずきます。(※書類の詳細な書き方は後述のセクションで解説します)
書類審査が通ると、最後に関門となるのが「実車検査(立会い検査)」です。指定された日時に保健所へキッチンカーを持ち込み、検査官が実物をチェックします。
ここでは、提出した図面通りに設備が配置されているか、水道はきちんと出るか、温度計は作動するかなどが厳しく確認されます。問題がなければ、数日〜2週間程度で「営業許可書」が交付されます。注意したいのは、検査に合格したその日から営業できるわけではない点です。必ず「許可証が手元に届いてから」オープンとなるので、オープン日は余裕を持って設定しましょう。
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「自分のメニューなら何リットル必要か?」 これはキッチンカー開業者の最大の悩みどころです。タンク容量は「40L・80L・200L」の3段階が基本ですが、選択を間違えると「メニューが出せない」あるいは「無駄に巨大なタンクで車が重くなる」という事態に陥ります。
ここでは、具体的なメニューを例に、必要なタンク容量をシミュレーションします。
まず、実際に開業した先輩たちのデータを見てみましょう。モビマルが支援してきた数多くのキッチンカーの中で、選択されたタンク容量の割合はおおよそ以下のようになっています。
・80Lタンク:約60%(最も一般的)
・40Lタンク:約30%(カフェ・軽食メイン)
・200Lタンク:約10%(本格調理・仕込み込み)
圧倒的に多いのが80Lです。これは、多くの自治体で「簡単な調理工程を含む飲食店営業」の基準が80L(40L×2ではない場合が多い)に設定されているためです。
結論:40Lで可能な場合も多いが、80Lが無難
カフェ営業の場合、基本的には「単一品目」や「簡易な調理」とみなされ、40L程度のタンクで許可が下りるケースがあります。しかし、ここで注意が必要なのは「氷」と「洗い物」です。
提供杯数と排水量の関係 コーヒーマシンやカフェラテのミルクピッチャーを洗う回数が多い場合、排水タンクはすぐに一杯になります。営業中に排水を捨てることはできないため、タンク容量が売上の上限を決めてしまうことになります。
メニューの拡張性も大事な要素です。「夏場はカキ氷もやりたい」「ホットドッグも置きたい」となった瞬間、工程が増えるため40Lでは許可が下りなくなるリスクがあります。将来を見越して最初から80Lを積んでおくのが賢明です。
結論:80Lが絶対条件。お米の扱いがカギ
カレーライスやローストビーフ丼など、ランチ営業の定番メニュー。これらは「下処理済みの食材を加熱・盛り付けする」工程が含まれるため、全国的にほぼ80L以上のタンクが求められます。
車内でお米を研ぐと、大量の水を使用し、排水もすぐに溜まってしまいます。そのため、多くのキッチンカーオーナーは「無洗米」を使用するか、許可を得た仕込み場所で炊飯したご飯を持ち込むスタイルをとっています。これにより、車内での水使用量を抑え、80Lタンクでも十分な回転数を確保しています。
結論:200Lが必要だが、軽トラでは積載オーバーの壁
最もハードルが高いのが、麺の茹で汁が大量に出るラーメンやパスタ、あるいは車内で生肉のカットや野菜の洗浄から行いたい場合です。これらは「大量の水を使用する」あるいは「仕込み行為を含む」とみなされ、**200L(給水200L・排水200L)**のタンクを求められることが一般的です。
■なぜ軽トラでは200Lが無理なのか?数値で証明
軽トラックの最大積載量は350kgです。
・水200L ≒ 200kg
・排水200L用タンク容器重量 ≒ 20kg
・給水200L用タンク容器重量 ≒ 20kg
・キッチンボックス(架装部分) ≒ 150kg〜200kg
・冷蔵庫、発電機、ガスボンベ ≒ 50kg以上
・運転手・スタッフ(2名) ≒ 120kg
これらを単純合計すると、560kgを超え、完全に積載量オーバーとなります。これでは車検に通らないどころか、走行中にタイヤがバーストする危険性もあります。 したがって、200Lタンクが必要なメニューを扱う場合は、最初から1トン車(普通車トラック)ベースのキッチンカーを選ぶ必要があります。
参考:東京都保健医療局 公衆衛生上必要な措置(食品衛生法施行規則別表第17、第18)
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「書類作成が面倒で、なかなか申請に行けない…」。そんな方のために、特に躓きやすい「申請書の書き方」と「図面作成」のコツをレクチャーします。
※様式は自治体により多少異なりますが、基本項目は共通です
申請書は、保健所の窓口でもらうか、ウェブサイトからダウンロードできます。
1.申請者情報 個人の場合は自分の名前と住所、法人の場合は登記上の情報を記入します。
2.屋号 お店の名前です。まだ決まっていない場合でも、申請時までには仮決めしておく必要があります。
3.営業の種類 「飲食店営業」にチェックを入れます。「自動車」という項目がある場合はそこにも丸をつけましょう。
4.食品衛生責任者 資格取得者の氏名を記入します。まだ手元に修了証が届いていない場合は、受講済みであることを証明できるメモなどを持参しましょう。
最も難関なのが「施設の構造及び設備を示す図面」です。保健所が求めているのは、美術的に美しい絵ではなく、「寸法と配置が正確にわかる図」です。
・手書きでもOK? 定規を使って直線を引き、読みやすい字で書かれていれば手書きでも問題なく受理されます。方眼紙を使うと縮尺がとりやすくおすすめです。
・PowerPointやExcelでの作成 図形ツール(四角形や円)を組み合わせて作成するのが主流です。修正も容易で、PDF化して保管できるメリットがあります。
図面に必ず記載すべき項目
・平面図(上から見た図): 各設備の配置、シンクのサイズ(幅×奥行×深さ)、通路の幅、ドアの位置。
・側面図(立面図): タンクの設置位置、給排水の配管経路、手洗い設備の位置(高さ関係)などを説明するために求められることがあります。
ここが審査のポイント! 「手洗い設備のシンク」と「調理用シンク」が明確に分かれているか、そしてそれぞれのサイズが基準(例:幅45cm以上など)を満たしているかが、図面上で確認されます。数値を入れ忘れないようにしましょう。
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法改正で「広域化」が進みましたが、現場レベルでは手順や運用に地域差が存在します。あらかじめ管轄の保健所によく相談し、その自治体のローカルルールを理解して営業許可の取得に望みましょう。
東京都はキッチンカーの激戦区ですが、区によって推奨する営業許可の手順に差があるため、まず管轄の保健所を確認し、必ず事前相談をしてからキッチンカーの製作・購入にうつるようにしてください。
・【例】港区:事前相談の義務化と手数料リスク
港区では車両持ち込み前の事前相談を明記しており、飛び込みでの許可申請は認められません。
2021年以降、「都内一円」「県内一円」といったエリアでの営業が可能になり、神奈川県は横浜、川崎、湘南エリアなどを一つの許可で回れる非常に便利なエリアです。しかし、申請する保健所を自由に選べるわけではありません。「キッチンカーの保管場所(車庫)がある自治体の保健所」で申請するという鉄則があります。
例えば、自宅が横浜市でも、駐車場が相模原市にある場合、相模原市の保健所へ行く必要があります。これを間違えると受付してもらえないため、車庫証明などの住所を必ず確認しましょう。
最後に、営業許可取得にかかる「お金」の話を整理します。
これは自分で申請しても必ずかかる費用です。
・営業許可申請手数料:15,000円〜20,000円程度(自治体により異なる。東京都は18,300円、港区は16,000円など)
・食品衛生責任者講習受講料: 10,000円〜12,000円程度
「面倒な図面作成や平日の申請を丸投げしたい」という場合、手続きを行政書士に依頼することもできます。
・代行費用の相場:30,000円〜50,000円程度
メリット:
・複雑な図面(平面図・立面図)作成をプロに任せられる。
・保健所との事前協議も代行してくれるため、専門用語でのやり取りで消耗しない。
・地域ごとのローカルルールを把握しており、許可が下りるまでのスピードが早い。
デメリット:
・コストがかかる。
代行依頼には当然ながらコストがかかるため、自力で申請を行うことも選択肢になりえます。「平日に会社を休んで保健所に行ける時間が十分にある」「図面作成ソフトを使える」という方は自力で、「副業で準備時間が取れない」「確実に営業許可を取得したい」という方は代行依頼がコストパフォーマンスが良いと言えるでしょう。
最後に、キッチンカーの営業許可取得する際に起こりがちな失敗事例を紹介します。先人たちの失敗から学び、同じ轍を踏まないようにしましょう。
失敗例1:デザイン重視で内装を作ったら、埼玉で営業できなかった
おしゃれな内装にこだわり、コンパクトなシンクを採用したAさん。都内では許可が下りたものの、埼玉県では「シンクの幅が45cm未満なので不可」と断られてしまいました。結局、シンクを入れ替える大工事となり、内装も一部壊すことに。
【対策】 営業エリアに含まれる「最も厳しい基準」に合わせて車両を作ることが鉄則です。
失敗例2:ネットで買える「車検対応シンク」の落とし穴
初期費用を抑えようと、ネット通販で「キャンピングカー用」と書かれた格安のシンクセットを購入したBさん。しかし、シンクの深さが浅すぎて、保健所の基準を満たせず不許可に。結局、買い直すことに……
【対策】 「車検対応」と「営業許可対応」は全く別物です。必ず寸法の数値を確認し、事前相談で担当者に「この商品を使います」と画像を見せて確認を取りましょう。
失敗例3:メニューを増やすには車の買い替えが必要!?
最初はコーヒーのみ(40Lタンク・軽自動車)で始めたCさん。売上アップのために「ランチも出したい」と考えましたが、調理工程が増えるため保健所から「200Lタンクが必要」と指導されました。しかし軽自動車には積めず、泣く泣くあきらめることに…。
【対策】将来やりたいメニューまで見越して、最初から80L以上のスペックや、普通車ベースの車両を選んでおくのが賢明です。
キッチンカーの営業許可取得は、開業への最初の大きなハードルです。しかし、ここを正しくクリアすることは、お客様に安全な食事を提供する「プロの料理人」としての第一歩でもあります。
もし、「自分のやりたいメニューにはどのタンクが必要なのか判断できない」「図面作成に自信がない」「確実に許可を取りたい」と不安に感じるなら、一度専門家に相談してみるのも近道です。
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