近年、キッチンカーの開業・起業が増えています。キッチンカーを開業する際に、もっとも大事なことのひとつが、保健所で営業許可を取得することです。キッチンカーで営業許可を取得するにはどのような手順を踏めばよいのでしょうか。
この記事では、キッチンカーを開業する際に必要な「営業許可」についての解説と、営業許可を得るために必要な資格や手順について解説します。
の記事は、このような人におすすめです。
・キッチンカーで起業を考えている人
・キッチンカーの営業許可を申請するには何が必要か知りたい人
・飲食店を経営しているが、キッチンカーに業務の幅を広げたい人
・キッチンカーの起業において、どんな資格が必要になるか知りたい人
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キッチンカーは、フードトラックとも呼ばれる移動販売車の一種。車両に調理機器を搭載し、移動した先で食品を調理・販売する「移動式の飲食店」です。その機動性と、開業費用や維持費が店舗型の飲食店と比較してコストが抑えられることから、近年では起業にも人気です。
気軽に始められると思われがちですが、飲食店の営業と同様に、キッチンカーの営業を行うにあたっては、保健所に申請を行い「営業許可」を取得する必要があります。
キッチンカーは調理した食品を提供する「飲食店」に分類されるため、食品衛生法の「営業許可制度」に基づき営業許可を取得する必要があります。
食品衛生法における「営業許可制度」とは、飲食に起因する健康被害を発生させるおそれのある営業について、施設に必要な基準を定め、その基準を満たすものに営業を許可する制度です。つまり、そのキッチンカーが「利用者(お客)に安全な食品を提供できるか」を証明するものが「営業許可」です。
<キッチンカーの営業許可が必要な理由>
・食品衛生の確保:適切な衛生管理を行い、食中毒などの健康被害を防止します。
・法令遵守:食品衛生法を遵守することで、合法的に営業が行えます。
・信頼獲得:保健所の許可を得ることで、消費者や取引先とのやりとりに信頼性が担保されます。
特にキッチンカーは、営業する場所で環境が常に変わるため、食材の温度管理や衛生管理が難しくなることが多くあります。なので、保健所は営業者が適切に食品の温度を管理し、食品が腐敗しないように対策を講じているかを厳しく確認する必要があるのです。
もし、無許可でキッチンカーの営業を行った場合、営業停止命令を受けるだけではなく、食品衛生法違反として罰金300万円以下、または懲役3年以下の罪に問われることがあります。
2021年6月の食品衛生法改正により、営業許可制度が見直され、キッチンカーを含む多くの業種で新たな基準が設けられました。
改正以前はキッチンカーで販売するメニューによって「飲食店営業」「菓子製造業」「喫茶店営業」と、異なる営業許可を取得する必要がありましたが、2021年6月1日より、キッチンカーは「飲食店営業」の営業許可に1本化されました。それに伴い、全国で検査合格基準が共通化されました。基準にあたっての基本的な考え方は同様ですが、「店舗」か「車両」の違いによって、営業許可に必要な書類は異なります。
また、合格基準は共通化されましたが、都道府県ごとの推奨基準が設けられている場合があります。営業許可は車両ごと、営業地を管轄する保健所に申請する必要があるため、車両を製作する前に保健所に条件を確認するとよいでしょう。
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キッチンカーの開業に必要なのは、保健所からの営業許可だけではありません。開業に必要な資格のほか、運転免許証など、日々の営業において必要な資格を以下で解説します。
食品を取り扱う営業を行う施設において、その施設には1名以上の食品衛生責任者を配置する必要があります。また、キッチンカーの営業許可の申請にも食品衛生責任者の資格を証明する書類が必要です。
食品衛生責任者は、各都道府県の食品衛生協会が開催している「食品衛生責任者養成講習会」を受講することで取得できます。
食品衛生責任者養成講習会は全部で6時間ほどの講習を受ける必要がありますが、e-ラーニングでのオンライン受講もできるため、取得のハードルは高くありません。
各都道府県ごとに受講料は異なり、東京都の場合は12,000円です。各都道府県の食品衛生協会については、以下から調べることができます。
食品衛生責任者の資格に有効期限はなく、一度取得すればその後の更新は不要です。ただし、衛生に関する法律は定期的に更新されるため、取得後も更新状況には気を配り、情報のアップデートを欠かさぬようにしましょう。
調理師など、以下に挙げる一部の国家資格を持つ人は食品衛生責任者養成講習会の受講を免除されます。
<食品衛生責任者講習を受ける必要のない資格(一部)>
・調理師
・栄養士
・製菓衛生師
・食品衛生管理者、または食品衛生監視員になれる資格(医師、薬剤師など)
食品衛生責任者の資格は原則として全国共通であり、都道府県をまたいでも有効です。そのため、東京で食品衛生責任者の講習を受けて資格を取得しても、神奈川や他の地域で営業を行う際にその資格を使用できます。一部道府県では受講時間の条件等が違うため、通用しないことがあります。
ただし、キッチンカーの営業許可は営業する地域(都道府県)ごとに取得する必要があるので注意しましょう。
営業許可を取得する際に必要なものではありませんが、キッチンカーで日々の営業を行うにあたり、必要になるのが運転免許証です。
普通運転免許を取得している人であれば、軽トラタイプの大きさまでのキッチンカーを運転できます。また、道路交通法の改正によって、2007年以降に運転免許証を取得した人は、下記のように普通免許で運転できる車両の総重量が異なるため注意してください。以下の基準よりも大きなキッチンカーを運転する場合、準中型・中型・大型免許の取得が必要です。
<2007年6月1日までに普通免許を取得した場合>車両総重量:8t未満
<2007年6月2日~2017年3月11日までに普通免許を取得した場合>車両総重量:5t未満
<2017年3月12日以降に普通免許取得した場合>車両総重量:3.5t未満
また、車両とキッチン部分が分かれている「牽引タイプ」のキッチンカーを運転する場合に、普通免許で運転できるのは以下のものに限ります。
・「車両総重量」(トレーラーの重量+最大積載量)が750kg未満
・トレーラーと牽引車を合わせた全長が12m未満
上記よりも大きな牽引タイプのキッチンカーを運転する場合、牽引免許が必要になります。
キッチンカーは食品の調理・販売を行いますが、調理師免許を取得する必要はありません。ただし、調理師免許を持っている場合は、食品衛生責任者養成講習会の受講が免除されます。また、お客様や取引先に対して、調理に関する専門的な知識と技能を持っていることをアピールできるため、信頼性が向上し、営業の幅が広がるというメリットもあります。
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キッチンカーの営業許可を取得するためには、営業する土地を管轄する保健所へ、必要書類を揃えて申請する必要があります。ここでは、主に「東京都」を例にとり、営業許可の申請手順を解説していきます。地域によって必要書類や申請料、手順が異なる場合があります。
参考:
東京都福祉保健局「新たに食品に関する営業を始められる皆さんへ ー自動車関係営業許可申請等の手引ー
営業予定地を管轄する保健所に行き、キッチンカーの営業に必要な設備や、営業許可に必要な書類について確認します。まず確認すべきことは「営業許可の基準」です。また、やりたい業態についても決まっていればアドバイスをもらうことができるため、事業計画書などの資料があるとより良い相談ができるでしょう。
最初に相談をする理由は、管轄する保健所ごとにキッチンカーの営業許可に必要な設備が異なる可能性がある点です。複数の土地での営業を予定している場合、基本的に管轄する保健所の営業許可をそれぞれ取る必要があります。営業予定地すべての管轄の保健所に、基準を確認する必要があります。
ただし、キッチンカーへの営業許可は東京の場合「都内一円」、その他の都道府県でも「県内一円」といったように、ひとつの保健所で複数エリアに対応できる場合もあるため、二箇所以上の土地で営業を予定している場合は、その許可でどのエリアまで営業ができるようになるか確認しておきましょう。
キッチンカーの営業許可を取得できるように、キッチンカーの車両を制作します。通常、キッチンカーの取得方法は、「新車を購入して、キッチンカーに改装する場合」と「キッチンカーとしてすでに改装された中古車を購入する」の二通りです。
新車購入を予定している場合は、保健所から聞いた条件を満たすように設備を整えます。キッチンカー制作の専門業者であれば、営業予定地の営業基準を把握している場合もありますが、保健所で聞いた基準と相違ないか念の為確認をすると安心です。
中古のキッチンカーは、すでに設備が揃っている場合もありますが、設備が足りなくなっている場合や、古い営業許可基準で作られたものである可能性があるため、営業予定地の現在の営業許可基準を満たすか購入時に確認する必要があります。条件を満たしていない場合、設備の追加や改修が必要です。また、中古のキッチンカーの設備は、経年で劣化している場合もあるため、よく状態を確認してください。
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必要書類を揃えて保健所への営業許可申請を行います。ここでは東京都を例に必要書類・申請手順を解説します。地域によって必要書類や申請料は異なるため、申請を予定している保健所に必要書類を確認しましょう。
1.営業許可申請書(1通)
定められた書式による営業許可申請書に、必要事項を記入します。
<営業許可申請書に記入する情報(抜粋)>
・申請者・届出者情報
・営業施設情報(住所・取扱品目など)
・営業の形態
2.施設の構造及び設備を示す図面(2通)
キッチンカーの構造・設備がわかる図面を用意します。搭載する予定のすべての設備について記載し、名称を記入します。
3.営業の大要(2通)
定められた書式に営業の大要を記入します。
<営業の大要に記入する情報(抜粋)>
・申請者
・仕込場所
・営業車の保管場所/営業予定地
・仕入先
・営業車の情報(自動車登録番号、車台番号、給水タンク容量、業種)
・取扱品目
4.許可申請手数料
東京都の場合、18,300円の許可申請手数料を支払います。申請料は地域によって異なります。
5.食品衛生責任者の資格を証明するもの
食衛生責任者養成講習会を修了時に発行される「食品衛生責任者手帳」、または食品衛生責任者の資格を有する国家資格の証明書等が必要です。
書類提出時に、保健所の担当者と、キッチンカーの工事の進捗状況の連絡方法や、立ち会い検査の日程について打ち合わせします。キッチンカーの完成時には必ず営業者の立ち会いの元で、検査が行われます。
立ち会い検査では、図面通りに工事が行われたか、営業許可の基準を満たしているかを確認します。営業基準に適合しない場合は、許可が降りません。不適事項があった場合、改めて検査日の日程を決め、再検査を受けることとなります。
キッチンカーが営業基準を満たしていた場合、営業許可書が作成されます。営業許可の交付には数日かかり、交付されるまでは営業をすることができないため、交付日についても保健所の担当者に確認しておくとよいでしょう。
東京都の場合、申請は「営業開始の10日前」を目安としていますが、申請書の提出から立ち会い検査までは約1週間、立ち会い検査から営業許可までは5日ほどの余裕を持つとよいでしょう。およそ営業したい10日~14日前には申請を行うことで、余裕を持って営業許可を取得することができます。
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ここでは、キッチンカーの営業許可を取得する際の注意点や、保健所がどのような点を重視して検査を行うか解説します。
・営業許可は「キッチンカー1台ごと」に必要
キッチンカーの営業許可は車両ごとに取得する必要があります。複数台のキッチンカーを持つ場合は、1台ごとに申請を行う必要があることに注意してください。
・どの保健所が管轄か確認する
仕込みをする場所、キッチンカーの保管場所、事務所のある住所によって、申請すべき管轄の保健所が変わる場合があります。事前相談の際に確認し、正しい保健所へ申請を行いましょう。
・スケジュールに余裕を持って申請する
東京都の場合、申請は「営業開始日の10日前まで」が目安となっています。特に〆切が設けられているわけではありませんが、営業許可がおりない限り営業はできません。立ち会い検査の日程調整や、申請に不備などがあった場合などでも、スケジュールに余裕があれば営業開始したい日に間に合わせることができるため、早めに申請を行いましょう。
・地域ごとの基準を満たしているか確認する
2021年6月の食品衛生法改正以降、検査合格基準が全国で統一されました。しかしながら、キッチンカーには地域ごとの推奨基準が設定されている場合があるため、事前相談の時点でよく確認しましょう。
キッチンカーの営業許可の申請の際に一番重要なのは、キッチンカーが合格基準を満たしているかどうかです。安全な食品を提供するための施設が備わっているかを、図面、そして立ち会い検査において細かく確認されます。特に重要なのは以下のポイントです。
・車両は衛生的・安全面に配慮された構造か
屋外からの汚染を防止し、衛生的に作業を行うことができる構造になっているか、広さは十分であるかを見られます。
・車内は使用目的に応じて区画されているか
作業区分に応じて必要な間仕切りがされているか、また、空気の流れがよく十分に換気ができる構造かを見ます。
・給水タンク・排水タンクの容量は適切か
タンク容量によって許可される作業が変わってくるため、適切なものが設置されているかを見ます。
・手洗いシンクは衛生的な構造か
手洗い専用のシンクと手を洗ったあと再度触れなくてよい非接触型(センサー式・足踏み式など)の蛇口が必要になっています。
・ふた付きのゴミ箱は設置されているか
においや水分が漏れない蓋付きの廃棄物容器が設置されているか。
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キッチンカーの営業許可取得のために必要な費用は以下の通りです。車取得に関する費用を別として、営業許可取得の費用は、およそ3万円~4万円程度かかります。
・車取得の費用
・食品衛生責任者養成講習会
東京都の場合は12,000円です。各都道府県の食品衛生協会によって受講料は異なります。調理師免許など、特定の国家資格を持っている場合は必要ありません。
・許可申請手数料
東京都の場合、18,300円の許可申請手数料を支払います。許可申請手数料は地域によって異なるため、管轄の保健所に確認してください。
営業許可を取得すれば、いよいよキッチンカーの営業を開始することができます。ただし、営業許可を取得したあとも、安全な食を提供するための継続的な努力と、営業許可への変更があった場合は都度、変更申請を行わなければなりません。
キッチンカーの営業者は、国が定める衛生管理基準に基づき、衛生を管理する必要があります。特にキッチンカーの場合、日々の営業において以下の衛生管理を守らなければなりません。
1.タンクの使用
給水タンクは常に飲用に適した水が供給されるよう、定期的な清掃を行い、清潔に保つ。
また、営業開始時には給水タンクへの給水を、営業終了時には給水タンク・排水タンク内の水を廃棄すること。
2.器具の使用
それぞれの使用区分に沿って正しく使用すること。
3.取扱品目・取り扱い量
商品・素材の量は、作業場の規模に合ったものにすること。
4.作業場所の遵守
作業は、必ずキッチンカー内で清潔に行うこと。
5.材料の解凍
冷凍材料の解凍は、専用の容器で衛生的に行うこと。
6.食品の保存
法の基準に従って、常に適正に行うこと。
7.食品の保管管理
特に先入れ先出し(先に仕入れたものを先に使う)に留意すること。
8.その他法令遵守
そのほか、食品衛生法施工規則 別表17および18に規定される基準を守ること
▼東京都保健医療局 公衆衛生上必要な措置(食品衛生法施行規則別表第17、第18)
初回の営業許可の申請時に提出した「営業許可申請書」「施設の構造及び設備を示す図面」に記載した内容に変更がある時は、「変更届」を提出する必要があります。変更届には営業許可書、および変更を明らかにする書類を添えて、変更のあった日から10日以内に提出します。
ただし、車自体を新しくする場合は、新規で営業許可を取得する必要があります。
キッチンカーの営業許可の有効期限は5年です。更新をする場合、期限内に許可継続の申請手続きを行う必要があります。許可期限の「約1ヶ月前」を目安に、下記書類を保健所に提出します。更新の際には改めて立ち会い検査が実施され、合格基準を満たしているか改めて確認が行われます。
・営業許可申請書
・現に受けている営業許可書(施設の構造及び設備を示す図面が添付されたもの)
・営業許可申請手数料
・食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等)
キッチンカーの営業許可は原則、営業する予定の土地を管轄する保健所への申請が必要です。都道府県によっては「都内一円」「県内一円」など、ひとつの営業許可でそのエリア内ならどこでも営業可能になる場合があるので、管轄の保険所に営業地域について確認してください。
営業許可以外で営業を行った場合、無許可営業となり罰則を受ける可能性があります。無許可でキッチンカーの営業を行った場合、営業停止命令を受けるだけではなく、食品衛生法違反として罰金300万円以下、または懲役3年以下の罪に問われることがあります。県境付近のエリアで営業を行う場合には特に注意しましょう。
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この記事では、キッチンカーで営業をはじめる際に必ず取得する「営業許可」について解説してきました。キッチンカーの営業許可取得において、最も重要なことは「車両の取得・改装」です。そのためには営業許可基準を把握した上で、車両の制作を行い、保健所の立ち会い検査をクリアする必要があります。
キッチンカーはひとりでの起業に人気ですが、車両の制作や手続きはかなり煩雑で手間もかかるため、業者に任せることも選択肢に入ってきます。
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